Kaggle Expert(銅2)は転職で役に立つのか
Kaggle Advent Calendar 2020 23日目の記事です。
簡単に
- Kaggle Expert(銅2)は私の転職活動において、下記2つを理由に役に立ったと考える。
- 約88%の面接にて、Kaggleの話題に触れて頂けた。
- 約76%の面接にて、ポジティブな感想を頂けた。
- 実務経験に加えて、Kaggleの実績があると、プラスαの評価に繋がるという印象。
- Kaggleと実務の違いを正確に把握し、自分が何をしたいのか整理するとミスマッチが防げる。
- MasterやGMの違った世界の話も聞いてみたい。
初めに
Kaggleにて優秀な成績を納めている方が、魅力的な企業へ転職をされる事例を何度かTwitterにて見かけています。 また、Kaggleの実績がある方を採用する、と要件に記載している会社もここ最近増えていると思います。 それらは全て、Kaggle Master以上、もしくは特定のコンペ1位〜3位など、一定の閾値を超えている方々が対象のように感じています。
事例1
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— Ryo Fujita (@ryo_fujita_) 2019年11月18日
事例2
優秀なデータサイエンティストを採用したい企業さんは、人材紹介会社に多額の紹介料を払うより、従業員のKaggleや勉強会参加に対して対価を払い、社外で思い切り活躍し宣伝してもらったほうが、転職リスクを抑えられますし、人材獲得効果は高いです
— 福田敦史 / Aillis CTO (@fukumimi014) 2019年9月28日
真に優秀な人材ほど転職市場には現れにくいものです https://t.co/lmQFs5Cy11
一方、Kaggle Expertという称号を活かして転職したよ、もしくは、Kaggle Expert以上を募集!という話はあまり見聞きしたことがありません。
そのため、Kaggle Expertという称号が転職に役に立つかどうかについて、(当時)銅2のCompetition Expertの私が実際に転職活動を行った際の情報をまとめ、 更に感じたことをまとめた記事です。
あなたは誰ですか
自社サービス会社にて研究開発員をしているsinchir0と申します。
転職活動時のステータスは下記です。
- 日系SIerにて、SE、データサイエンティストを4年
- 外資系IT企業にて、コンサル兼データサイエンティストを1年
- 機械学習を用いたシステムについて、提案、PoC、開発、保守・運用など
- Kaggle Competition Expert(銅2)
どうやって役に立つかどうかを判断するの
大きく二つの観点で書いてみます。
定量的な評価
下記3点でまとめています。
- Kaggleのことを聞かれた割合
「面接という限られた時間で、候補者を判断する重要な場において、Kaggleの質問をする = 選考に影響を与える」という仮定のもとです。
- Kaggleのことを聞かれた面接のうち、合否の割合
上記で聞かれたかどうかの情報のうち、聞かれた企業と聞かれなかった企業で合否割合に差が出るか見てみます。
- 会話内容
どのような会話内容が多かったかを、意味合いの観点で集約した上で、カウントしています。
面接時の感触
評価でも何でもないですが、Kaggleのお話をした際の反応や、話した側の感触について記載してみます。
データ
データの集め方
全面接について、面接中 or 面接後に議事録を取り、そのデータを使っています。
条件
履歴書、職務経歴書、使用した転職サイトの紹介文には全てKaggle Expertであることを記載しています。
面接回数
17回です。
データが少なすぎるのは承知の上ですが、それでも自身の経験から何か有用な情報が出せれば、という思いのもと書いています。
時期
2020年7月-8月の約2ヶ月間です。
どのような会社を受けたの
下記のような会社となります。
実際には15~20社に応募していますが、本番の面接前に落ちた企業は除いています。 また、当然詳細な記載はできないため、情報は集約しています。
更に、私が現在所属している企業名はTwitter等から分かるため、今回のデータから除外しています。
職種の集約の仕方
実際に受ける際には様々な職種名がありましたか、ざっくり以下の括りに従って集約を行っています。
- データサイエンティスト(受託分析)
自社が持っているデータではなく、顧客からデータを受領し、分析を行う職種
- データサイエンティスト(自社サービス)
自社が持っているデータに対し、分析を行う職種
- 機械学習エンジニア
予測アルゴリズムを実際のシステム・サービスとして開発・デプロイし、運用する職種
結果
Twitterでのアンケートの結果(20201227追記)
いきなり追記ですが、Twitter上にてアンケートを取った結果、Kaggleの称号を持っている方83名について Kaggleに関して聞かれた割合は57.8%となりました。
Kaggleの称号を持っている方にお聞きします。転職活動の面接時に、Kaggleに関して聞かれましたか?
— しんちろ (@sinchir0) 2020年12月23日
もちろん、どの称号なのか、どのような職種の面接なのか、など回答の背景に幅はありますが、 半分以上の方が面接でKaggleについて質問されるということが分かります。
回答頂けた方本当にありがとうございます。
定量的な評価
1. Kaggleについて聞かれたかどうか
約88% (15/17)の面接で聞かれました。
これはかなり高い確率といえそうです。
より詳細な結果を下記表にまとめています。
面接内でどの程度の時間Kaggleについて聞かれたかを2,1,0で数字にしています。
面接時間の1/3以上、Kaggle関連のお話をした面接は約24% (4/17)ありました。
Kaggleの取り組みを重視していることが伺えます。
2. Kaggleについて聞かれたかどうかと、通過率の関係
次は通過率に関して見ていきます。
通過に関しての結果を下記表にまとめました。
カジュアル面談は合否という概念が存在しないため省いています。
・・・ データが少なすぎますね。
機械学習エンジニアに関してはもはや情報量が0になりました、すみません😂
一応、上記2つの表を組み合わせて、下記のような数字を算出してみます。
無理やり何かいうのであれば、
「Kaggleについて聞かれた面接」の通過率83%に対し、「Kaggleについて聞かれなかった面接」の通過率が50%のため、
「Kaggleについて聞かれた面接」の方が通過率が高いとかになります。
が、流石に母数が少なすぎるので何も言えないです😇
3. 会話内容
次は議事を元に、どのような意味合いの会話を多くしたかまとめます。
各項目に関して、感想を記載します。
- Kaggle取り組んでいるんですね!凄いですね!
自分が経歴書などにKaggle Expertであることを書いているため、触れて頂ける面接官の方が多かったです。 その際、「良い取り組みですね!」とか「Kaggleに日常的に取り組めるのは凄いですね!」と言った、ポジティブな感想を頂けた面接が約76%でした。 プラスの印象を与えることが多いことが伺えます。
- どの程度の時間、Kaggleに取り組んでいるんですか?
- どのようなコンペに取り組んでいるんですか?
どの程度の時間取り組んでいるかや、どのようなコンペに取り組んでいるのか、という内容まで触れて頂けるパターンは24%、18%と多くはありませんでした。 これは面接をして頂いている方が、どの程度Kaggleに対する知識があるかに依存すると考えています。
- Kaggleと実務の違いはどのような部分にあると思いますか?
Kaggleと実務の違いはどのような部分にあるかについて、聞かれた面接は18%ありました。 特に面接の回数が進む(面接官の役職が上がる)につれて、この質問を頂く傾向は増えています。
その傾向は、下記の表から伺うことができます。
そのため、「Kaggleと実務の違いを明確に理解しているか」という部分を特に役職が高い方は重視していることが伺えます。 本質問に関しては、面接時の注意点でもあると考えており、Kaggleの実績を伝える際の注意点で別途まとめています。
面接時の感触
Kaggleへの取り組みに触れて頂き、更にポジティブな意見を頂ける企業さんは非常に多かったです。
ただし、勿論Kaggleのみ聞かれる訳はなく
- 業務として現在までにどのような取り組みをしたか、
- 成果を出した業務経験は何か、その業務に対しどのような工夫をしたか
など、Kaggle以外の部分も、全企業さんから集中的に聞いて頂けました。
そのため、Kaggleの成果に関して、「あれば更に良い」という実績に当たるのだろうなというのが私の感触です。
結局Kaggle Expert(銅2)は意味があったの
少なくとも私の転職活動において、意味があったと感じています。これは下記2点より 面接において好印象に繋がっていると考えているためです。
- 約88%の面接において、Kaggleの話題に触れて頂けたこと
- 約76%の面接において、ポジティブな感想を頂けたこと
一方で、MasterやGMの方からするとまた違った世界が見えているはずなので、 是非そう言った方々のお話も伺ってみたいなと思っています。
Kaggleの実績を伝える際の注意点
「会話内容」の部分にも記載していますが、「Kaggleと実務の違いを理解しているか」という質問を頂くこともありました。
この質問を頂く場合には、下記点に対する考え方を面接官の方が確認されているようでした。
- データを収集するような泥臭い仕事も非常に重要であり、多くの時間がかかる作業だが、その理解はあるか
- 現場において、モデル構築以外に取り組む時間が圧倒的に多いことを理解しているか
- 状況によっては機械学習の適用が必要ない場面も多いが、その理解はあるか
業務内容にマッチングするかどうかの非常に重要な観点だと考え、正確に自身の考えを伝えた方がミスマッチが防げるかと思います。
ちなみに、「Kaggleと実務の違い」の理解に関してはtakapyさんの下記記事が世界で一番分かりやすいと思っているので紹介させて頂きます。 speakerdeck.com
まとめ
- 銅2のKaggle Expertは私の転職活動において、意味があったと考える。これは下記2つを理由とする。
- 約88%の面接にて、Kaggleの話題に触れて頂けた。
- 約76%の面接にて、ポジティブな感想を頂けた。
- 機械学習の実務に加えて、Kaggleの実績があると、更にプラスの評価に繋がる。
- Kaggleに関する質問の有無と通過率に関連があるかは、データが少なくよく分からない。
- 「Kaggleと実務の違いを明確に理解しているか」の質問に対する自身の考えを正確に伝えることで、業務に対するミスマッチを防げる。
- MasterやGMの違った世界の話も聞いてみたい。
最後に
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