皆さんは、自分の話がつまらない、相手に響いていないと感じたことはありますか?
私はあります。
では、どうすれば面白い話ができるようになるのでしょうか。
話し方の本を読む? プレゼンの練習をする? 話し方教室に通う?
どれも良い方法だと思います。
私はM-1グランプリに出場することにしました。
そして2026年9月27日、実際にM-1グランプリの1回戦に出場し、見事に敗退しました。
結果は残念でしたが、本番では臆することなく漫才をやり切ることができ、大きな達成感がありました。
今回は、そんなM-1への挑戦を振り返り、出場を決めた経緯から本番までの思い出をブログに残そうと思います。
あなたは誰?
35歳のITエンジニアです。男性です。
なぜ出場しようと思ったのか
面白い話ができるようになりたいからです。
そもそも、なぜ自分の話がつまらないと思うようになったのか。
きっかけは、趣味や仕事で行っている技術的な発表でした。
ある日、自分の発表に対して誰からもコメントをもらえないことがありました。1回だけならともかく、それが複数回起きました。私は悩みました。
「なぜ誰も自分の発表にコメントしてくれないのだろう」「たまたま誰も興味のない発表をしてしまったのかな?」「でも、そんなことが複数回も起きるだろうか?」
そして、ある疑惑が浮かびました。
「もしかして、自分の話はつまらないのでは?」
そこで、面白く、かつ分かりやすく話せるようになりたいと考えるようになりました。
そんなことを考えていた頃、我が家では年末恒例のM-1グランプリを見ていました。妻がM-1を好きなこともあり、毎年見るのが恒例になっていたのです。
元々、私は漫才にあまり興味がなかったのですが、何度か見るうちに「漫才って面白い!」と感じるようになりました。
そして、ふと思いました。
面白く、分かりやすく話すプロといえば誰でしょうか?
そう、芸人さんです。
では、芸人さんのような面白さ、分かりやすさを身につけるために、私が具体的にできることは何でしょうか?
そう、M-1に出ることです。
こうして、私のM-1出場が決まりました。
出場までに何をしたか
- 一緒に出てくれる人を探す。
- 漫才を学ぶ。
- AIと一緒に漫才を作る。
- 応募し、本番がいつくるかドキドキしながら待つ。
- 練習をする。
- 本番を迎える。
ひとつずつ説明します。
1 一緒に出てくれる人を探す
M-1には少なくとも2人で出る必要があります。そのため、いわゆる相方を探す必要があります。
幸いなことに私は友人関係に恵まれており、突拍子もない企画に付き合ってくれる、古い友人がいました。例えば、コモドドラゴンに会いにインドネシアに行ったり、ゲルに泊まるためにモンゴルへ行ったり、東京発のダーツの旅を数日間したこともあります。
そこで、まずはその友人にLINEで相談しました。

即決でした。判断に要した時間はわずか26分。さすがです。(ちなみに私は「成瀬は天下を取りにいく」を読んでいません。)
というわけで、友人を相方に据えて、M-1に出ることが決まりました。
2 漫才を学ぶ
さて、M-1に出るためには漫才をする必要があります。しかし、2人とも漫才の経験はありません。友人に至ってはM-1を見たことがないと言っています。
そこでまずは、参考になりそうな本を読むことにしました。1つ目は『しゃべくり漫才入門 ボケとツッコミの基本ぜんぶ教えます』です。
こちらの本から、漫才における起承転結や、漫才師自身のキャラクターが重要なこと、しゃべくり漫才とコント漫才の違いを知りました。
今までは漫才を見ていても「面白い人たちだな」ぐらいにしか思っていませんでしたが、その裏には、観客を笑わせるための工夫が凝らされていることを知りました。
次に読んだのは『ショーハショーテン!』です。
こちらの漫画を読んで、漫才に対する印象が大きく変わりました。漫才って、こんなに熱くてかっこいいものなのか!
また、ネタ作りの技術についても学びました。例えば、限られた時間の中に「フリ・ボケ・ツッコミ」をどれだけ盛り込めるか、という笑いの密度を高める考え方です。
漫才は面白いことを話すだけでなく、緻密に構成を考える必要があるのだと知りました。
3 AIと一緒に漫才を作る
次は、漫才を作るフェーズです。
まずは、漫才のテーマを考えます。カフェで友人と話し、「単語の聞き間違いをきっかけに、勘違いが連鎖し、笑いが生まれていく。」といったテーマを考えました。
さて、テーマが決まったとて、初心者である我々はこれをどう具体的な漫才にすれば良いか分かりません。そこでAIに「このテーマに沿って漫才を書いて」と依頼しました。すると、次が生成されました。
A「この前さ、映画何見るかで揉めてて」 B「あー、あるね」 A「俺が『久しぶりにハリーポッター観よう』って言ったのよ」 B「うんうん」 A「そしたら、全然話噛み合わなくなって」 B「え、なに?針ポッター?」 A「聞き返すにしても変!なんで痛そうな方向に行くんだよ」
よく分かりません。
ハリーと針の聞き間違いなのでしょうが、そんな聞き間違いはしないだろうという感じです。
聞き間違いの漫才はテキストで考えるAIだと難しいのかも?と2人で考え、新しいテーマを考えました。そのテーマは「Aが失敗談を相談し、Bがさらにまずい状況をボケとして説明し、Aが突っ込む。」というものです。このテーマに沿ったプロンプトをAIに与えたところ、次が生成されました。
# 展開A ## 導入 A「最近、仕事どうよ?」 B「順調だよ、最近部長にも昇格してさ、俺としては昇格遅い方だけどな」 A「そうなの?凄いじゃん!俺はさ、あんまり上手くいってなくてさー」 B「え、どうしたん?」 A「会社でミスしちゃって。会議の資料、古いバージョン送っちゃったんだよね」 B「あ〜」 A「上司にも『確認した?』って言われてさ…結構へこんでる」 ## ボケ、ツッコミ B「それで思い出したけど、会議の資料の送り方分からなくて、先方の家まで持っていった人いるらしいね」 A「資料の持っていき方が原始的すぎるだろ!」 B「しかも先方の家まで走っていったらしい」 A「汗だくになるだろ!」
先ほどの「針ポッター」と比べると、だいぶ漫才らしくなりました。
こちらをベースに、我々が具体的なまずい状況をいくつか考え、細かいセリフの案をAIに考えてもらうことで、初心者でもなんとか漫才を作ることができました。
4 応募し、本番がいつくるかドキドキしながら待つ
2026年のM-1の募集が始まるのを今か今かと待ちわびていたところ、6月ごろに募集が始まりました! エントリーサイトはこちら。
紙のエントリー用紙に、コンビ名や芸名、参加可能な日などを記入し、2人の写真とともに吉本興業まで郵送する必要があるようです。
7月ごろに再び集まった我々は、コンビニでエントリー用紙を印刷し、その場でコンビ名と芸名を決め、カフェで必要事項を記入しました。実際の用紙はこちら。

私の芸名は「ワンダフルしんいちろう」にしました。素晴らしい人生を象徴する名前です。
こうして、無事にエントリーを終えました。
ちなみに、後日公開された公式プロフィールを見て、あることに気づきました。
結成年が2026年11月19日と未来の日付になっています。

ちなみに、本番は2026年9月27日です。
結成する前に敗退するという、なかなか珍しい経歴を手に入れました。
5 練習をする
漫才の練習は、主にカラオケで行いました。
まずは台本を暗記し、スムーズにセリフを言えるようにします。その後、体の動かし方や、セリフに合わせた表情をどうするかを決めていきました。
しかし、ここで問題が発生しました。
我々は2人とも、普段からあまり感情を表に出さないタイプの人間です。
漫才師としては、なかなか厳しい初期設定です。
そこで、大阪出身の妻に指導をお願いしました。漫才経験はありませんが、我々よりは適任だろうという判断です。
また、M-1の1回戦では、漫才を2分以内に収める必要があります。
これがなかなか難しい。
面白いと思って作ったネタも、実際に声に出してみると時間が足りません。泣く泣く削っていった結果、最初に作った台本の半分程度しか残りませんでした。
さて、もう一つ問題がありました。
お互い社会人なので、2人の予定がなかなか合いません。とはいえ、漫才は2人で行うものです。1人では相方のセリフを聞くことができません。
そこで、Claudeを使い、1人でも漫才の練習ができるツールを作りました。
仕組みはシンプルで、スライド形式でセリフを表示し、相方のセリフだけを音声で読み上げてくれます。
主に電車の中で利用し、自分のセリフを暗記するのに役立ちました。
ちなみに、音声で会話できるAI「GPT-live」に台本を渡して、漫才の相方になってもらうことも試しました。
しかし、こちらはうまくいきませんでした。
台本にないセリフを勝手にアドリブで話し始めるのです。
こちらは台本を覚えたいのに、相方が毎回違うことを言ってきます。どうやらAIの方が、我々よりもアドリブに積極的なようです。
結局、台本どおりにセリフを読んでくれるClaude製のツールを使うことにしました。
6 本番を迎える
さて、練習に明け暮れる日々を9月中旬まで過ごしていたところ、ついに本番が9月27日に決まりました。第一希望の日程でした。
会場は渋谷にあるシダックスカルチャーホールです。
当日の朝は、私たちの漫才を見に来てくれた友人と軽く挨拶を交わし、受付を済ませた後、控室へ案内されました。
控室には、我々のような男性2人組もいましたが、中学生のように見える若い男の子2人組や、女性同士のペア、おじいさん同士のペアなど、実にさまざまな人たちがいました。
年齢も性別も違う人たちが、同じ舞台を目指して集まっている。改めて、M-1というイベントの素晴らしさを感じました。
そして、控室にはものすごい緊張感が漂っていました。
周囲のコンビは、ギリギリまでネタの確認をしています。小声でセリフを合わせたり、身振り手振りを確認したり。みんな本気です。もちろん我々も本気で緊張していました。
いよいよ出番です。
舞台に立つと、目の前にはお客さんがいます。これまでカラオケで練習してきた漫才を、ついに人前で披露する瞬間がやってきました。
本番では、大きくセリフを間違えることもなく、だいたい練習どおりに漫才をやり切ることができました。
大爆笑を巻き起こすことはできませんでした。
しかし、一瞬だけ、お客さんから「クスッ」という声が聞こえました。
笑ってくれた人がいたのです。
たった一度の小さな笑いでしたが、自分たちで考えたネタで、見ず知らずの人が笑ってくれたことが、とても嬉しかったです。
結果は、1回戦敗退でした。
それでも、緊張感のある舞台で最後までネタをやり切れたこと、そして少しでもお客さんに笑ってもらえたことに、大きな達成感がありました。
こうして、我々の初舞台は幕を閉じました。
最後に
以上、35歳のITエンジニアがM-1グランプリに挑戦した記録でした。
結果は1回戦敗退でしたが、漫才のことを何も知らなかった2人が、ネタを作り、人前で披露するところまでたどり着けたこと自体が、貴重な経験だったと思います。
さて、肝心の「面白い話ができるようになったのか?」という問題ですが、妻からは「少し声が大きくなった」と言ってもらえました。
面白くなったかどうかは分かりませんが、少なくとも声量は改善したようです。
一歩前進ですね。
最後に、面白くなりたいと思っている方や、漫才に少しでも興味がある方には、M-1グランプリへの出場をおすすめします。


































